外部サイト「適食情報」(佐藤道夫氏)

適食情報

食生活ジャーナリスト・佐藤道夫氏による。

ベストセラー『食品の裏側』の裏側

食品添加物は、それを食べる人の健康を害するか否か

 「みんな大好きな食品添加物」というサブタイトルが付いた書籍が昨年の11月に発売された(『食品の裏側』阿部司著・東洋経済新聞社発行・税込み価格1470円)。内容が科学性に欠けるので、社会に大きな影響は与えないであろうという私の予測を覆して、ベストセラーになっているらしい。今回は、この本の中身を検証してみた。

 この本の宣伝コピーに「安さ、便利さの代わりに、私たちは何を失っているのか」とある。いかにも「食品添加物のメリットを享受すると“健康”を害する」ということを推測させる文章だが、この本にその答えは書かれていない。私がこの本にもっとも期待(?)したことは「食品添加物は、それを食べる人の健康を害するか否か」という点である。

 しかし、この本には、このことに関する科学的な記述はほとんどといってもいいくらい見あたらない。よく探してみると、次のような記述が見つかった。
−−添加物の問題というと、多くの人がまず最初に思い浮かべるのが「毒性」でしょう。だれもが「添加物は体に悪い」「体に毒だ」という意識を持っている。(181p) 読んでわかるように、これは毒性に関する科学的な記述ではない。多くの人の感想である。

 また、次のような記述もある。
−−添加物の毒性や使い方を研究している学者はたくさんいます。(47p) これも、研究者がたくさんいるという記述であって、添加物が健康に悪影響を与えるという記述ではない。

●添加物の恐ろしさは毒性よりも食卓を崩壊させること(?)

 著者の阿部氏自身は毒性の研究者ではないので、自ら「添加物の毒性」を証明する必要はない。しかし、このような本を著すからには、科学的な多くの研究を分析するなどして、「このような研究から、自分は、添加物はそれを食べる人の健康を害する(あるいは逆に、害しない)と判断する」という主張を明確にしておかなければならないだろう。それをせずに、いくら「現場では添加物がこんなにたくさん使われている」と書いても説得力はない。

 この本の中に「添加物は毒だ