【番外編】肉の生食問題を歪める似非・食品ジャーナリスト、郡司和夫

2009年、2010年の両年、日本国内における食中毒死者はゼロだったことを、食の安全情報blogのohira-yさんがニュースとして取り上げた。しかし明けて2011年早々、フグ中毒による死者が出て連続記録は絶えてしまった。そして、ユッケで4人の死者を出すという痛ましい事件が起こったことは報道されているとおり。

牛や豚や鶏は、それ自身が食中毒を引き起こす細菌やウイルスを持っている。「生食用の肉」が流通しているのは実質馬肉だけ、牛肉は「生食用の基準」はあるにはあるのだが、それを満たしている牛肉は、少なくとも国内のと畜場からの出荷実績は皆無(ごく少数の輸入肉が存在するという)、要するに「生食用の牛肉」など事実上出回っていないということということになっていた。鶏肉に至っては「生食用の基準」すらない。基準を設けるのも難しいということ。

エコナトランス脂肪酸で動き回った消費者庁、担当大臣の野田聖子福島瑞穂エコナトランス脂肪酸なんかに比べれば比較にならないくらいリスクの大きい肉の生食問題に関心を持っていた形跡は見当たらない。不幸な事件ながら、こんな時こそ発足して日の浅い消費者庁が存在感を出せる絶好の機会でもあると思えるのだが、今回の事件に関しては「厚生労働省への協力要請」にとまっている。このトーンの低さは理解しがたい。さらに付け加えれば、原発や遺伝子組換え作物、放射線照射を問題にしている日本消費者連盟食の安全・監視市民委員会福島第一原発事故を取り上げる一方で、作物や水から検出された微量の放射性物質に比べれば比較にならないほどリスクが高いはずの、肉の生食問題を何故か追ってはいない。

話が逸れるが、遺伝子組換え作物を蛇蝎の如く忌み嫌ってきた生活クラブ生協等の一部の生協が、東日本大震災で非組換え飼料の調達が困難になったということで「緊急措置」と称して不分別飼料の使用を始めた。非組換え飼料の調達が出来るまで、肉・卵・牛乳の扱いは止めますと言えないのか? 所詮は山の手の有閑奥様クラブ、非組換え作物と心中する覚悟まではなかったらしい。

これら古臭い思想先行型の市民運動とは違う、「科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体」を標榜して発足したばかりの「FOOCOM.NET」では、原発問題は一時中断して専ら肉の生食問題を追っている。

ところで、mixiニュースで「NEWSポストセブン」が配信され始めた。小学館の「週刊ポスト」「女性セブン」の記事を配信しているのだが、本を手にとって読むのはアホらしいニュースも読める。原発は全部風力で代替できるという、朝日新聞に載った机上の空論を安井至氏が斬り捨てていたが、ライターの取材先にはトンデモも出て来る。郡司和夫という、記事の説明では食品汚染や環境問題に詳しいとされているトンデモジャーナリストがこのようなことを言っている。

激安系の卸業者は販売先を増やすために、“効率よく使える”という触れ込みで、ユッケをすでにミンチにした状態で出荷しているところもあります。この場合も、古い肉を混ぜて袋詰めしたりということも平気で行われているんです

部位ごとに安く買い叩いているケースでは、卸業者が流通段階で出元のわからない肉を仕入れている疑いも否めません。黒毛和牛といいつつ、同じ国産牛でも乳の出なくなったホルスタインの肉を混ぜていたケースもありました

はて、「古い肉」がどのくらい古い肉を差すのかはわからないが、それをユッケ用と称して販売することはダメだとしても、安物肉の混ぜ物だろうが、十分に火を通せば、今回のような食中毒は防げたはずだ。「肉の生食という行為そのものの是非」を、「安物のクズ肉問題」に論旨をすりかえている訳だ。トンデモジャーナリストの手にかかるとこうなるという見本。

小若順一の講演でも、安物肉のことを言っていたので、それを遮って強引に「安物肉を活用することは、悪いことですか?」と野次ったことは、このブログで以前書いたとおり。このブログの本来の批判対象である安部司も、牛や豚に感謝しようとあるページで説いている一方で、「ドロドロのクズ肉」に「廃鶏」と、元は生命体であった肉をバカにしている。

と、ここまで書いてきて、5月12日の全国消費者団体連絡会主催の勉強会の席で厚労省の課長の口から、これまでの「生食用の牛肉は存在しない」という論調をひっくり返す仰天の発言が出たという。詳しくはFOOCOM.NETの当該記事を読まれたし。